北朝鮮、最後の日
北朝鮮は6次核実験に次いで大陸間弾道ミサイル ファソン14号を発射し、1万キロを悠に超えて南太平洋の海へと落下した。
アメリカ西海岸を射程に入れる事に成功したこのICBMによって、世界中の疑問と論争を巻き起こしていた大気圏再侵入の技術を金正恩が手に入れた事実を高らかに世界へと見せつけられ、アメリカの怒りを伴う警戒心と失望感はレッドラインを超えた。
北朝鮮の核による脅威はもはや机上の空論を超え現実のものとなり、世論は対話を中断し軍事オプションの行使を検討することを政権に求め始める。
トランプは秘密裏に国家安全保障会議(NSC)を招集し、北朝鮮に対する空襲を決定。そして具体的なタイミングを図る検討へと入った......
シリーズ前編はこちらから。
北朝鮮の核クライシスについての考察 - Life in Los Angeles.
北朝鮮とアメリカの軍事オプションについての考察 - Life in Los Angeles.
作戦計画8010
作戦計画8010-08(OPLAN8010)とは、オバマ政権がスタートした2009年1月、大量破壊兵器を保有する潜在的敵性国からの脅威を取り除くため、米戦略軍司令部によって考案/作成された計画である。
目標の核や化学兵器などに対し、アメリカが保有する核および在来兵器で打撃するという内容で構成されており、具体的に北朝鮮、ロシア、中国、イラン、シリアに対する脅威からの米本土・同盟国防衛を目的に構成されている。
そのほとんどが未だベールに包まれているため全容の把握が難しいが、一部リークされた内容を紐解いていくと、作戦計画8010-08の断片図が浮かび上がってくる。
計画には大陸間弾道ミサイル(ICBM)・ 潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)・ 戦略爆撃機による爆弾投下および、精密誘導弾(JDAM)などを利用した敵性国の軍事、大量破壊兵器施設、軍および国家指導者、戦争支援インフラの破壊などが定義されている。
具体的に
1)B1-B、B-2ステルス爆撃機とB-52戦略爆撃機
2)攻撃原子力潜水艦
3)F-22およびF-35ステルス戦闘機などが空襲を担当するが
軍および国家指導者の排除という項目に注目してみるとすなわち、作戦計画上の打撃対象国家によって大量破壊兵器を使用する兆候が緊迫した場合、破壊のみならずこれに習って政権の交代も積極的に推進するという意味に読み解くことが出来る。
そして
X-DAY
某日日没、戦略爆撃機が駐屯するバークスデール、マイノット、ホワイトマン空軍基地は普段の緊張感にましてピリッとした空気が流れていた。
訓練で利用していた模擬弾に代わり、約20トンに登る実弾をフル装備したB-52、そしてB-2、B1-Bの爆音が日没の夕焼けを切り裂き次々と離陸していく。
前日の雨の影響か、比較的視界が良好な太平洋上空でKC-10から幾度か空中給油を受けた彼らは、爆撃機の進路を北朝鮮へと向けはじめた。
飛行位置を見極めるとワシントン・ホワイトハウスに座するトランプ大統領は、参謀が見守る中、核の発射装置が収められたカバン「フットボール」を開け核攻撃の命令を下す。
マティス国防長官の確認を受けた米国防総省傘下の指揮センターと、レイブン・ロック指揮センター、およびE-4ナイトウォッチが核攻撃の命令を受け、北朝鮮に向けて飛行中のB-52に核ミサイル発射命令であるEAM、すなわち緊急行動指令を発信する。
爆撃機の乗務員たちはEAMを接収した直後、決められたルートにしたがって命令を再確認し装着された核ミサイルの最終点検に入った。
核予防打撃
B-52とB-2が極東付近に近づいた頃、嘉手納基地で待機していたF-15が離陸し上空で護衛飛行を開始した。
爆撃機が韓国と北朝鮮の軍事境界線を越えて国際空域に侵入する直前、東側海域水中で待機していた米海軍オハイオ級誘導ミサイル原子力潜水艦からトマホーク巡航ミサイル、SLBMが大量に発射された。
太平洋に配置されているオハイオ級戦略核潜水艦は韓半島にとって特別な意味をもつ、と米太平洋司令官に言わしめるほど戦術的価値が大きい。
当初ロシアと中国をターゲットとして配置されたこの潜水艦は、D5システム*1を搭載しSLBMの信頼性をあげている。
発射されたミサイルは、事前に入力されたデータに従って北朝鮮の防空レーダーと地対空ミサイル発射基地に向け飛行していく。
海軍のピンポイント爆撃バックアップにより無事に目的地の北朝鮮東側上空へ到着したB-52は、爆弾倉を開け、AGM-86Bを投下する。
AGM-86Bは空中発射型の巡航ミサイルで、米軍が保有する巡航ミサイルの中では唯一核弾頭を装着できるが、装着された戦術核弾頭W80は、5キロトンから150キロトンまで破壊力を調整することができる。
仮に最大の150キロトンに調整した場合、大戦中に広島へ落とされた原子爆弾リトルボーイの10倍以上の破壊力を発揮する。
先に発射されたトマホーク巡航ミサイルの攻撃によって網の目のように細かい北朝鮮の防空網は正確さを失い、対空砲火を避けるように核を搭載したAGM-86B巡航ミサイルは北朝鮮の山脈や渓谷に沿って低空飛行を続け着実にターゲットへと接近する。
衝撃と恐怖
地形参照航法装置とGPSによって目標上空に至ったAGM-86B巡航ミサイルは、自動でエンジンを消し小型のパラシュートを開くと重力にしたがってターゲットに向け落下していく。
1990年代末には、B-2離陸後北の目標物打撃まで25時間を要していたが、3回にわたるハードウェア/ソフトウェアのアップデートを経て作戦時間は50%短縮し、さらに最新のアップデートでは8時間以内へと短縮されている。
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