Life in Los Angeles.

ロサンゼルスに住む永住権者の冒険と、アメリカの日常を書きたい気分で徒然なるままにお届けします。

不惑にして人生をしる (2:転期)

 

  第1話はこちらから

 不惑にして人生をしる (序章) - Life in Los Angeles.

 

ロサンゼルスにそびえ立つ遊園地と見間違うごとく巨大な、アメリカ然としたショッピングセンターに併設する シネマコンプレックスでの映画鑑賞もつかの間に

 

海賊の冒険活劇とアライグマの宇宙を救う旅から2017年の現実世界へと戻ってきた我々だが、映画の内容はさておき、バケツいっぱいに満たされたプールのような砂糖水が果たしてどこへ消えていくのかに関しては、ついに今回もひも解くことが叶わなかった。 

 

エジプトやペルー、アマゾンの奥地などに残る人類未踏の不可思議は数あれど、砂糖水の行方はどのようにしたら世界に知らしめることができるのか、今後の課題として真剣に検討して行きたいと思う。

 

【成果コミット型英会話ALUGO】

 

それはさておき、世界で一番有名なねずみのマネジメントが提供するこの4時間がすこぶる満足であるとは言い難かったが、非日常を体験したことで脳みその隅っこに小さく陣取ったクリエイティブな細胞を刺激する程度には微量な達成感をもたらしていた。

  

いつそんなに映画をとっていたのか少しも思い出せないくせに、いつのまにか気分だけは一流監督になっており、プロットの構成から演出、撮影のアングル・編集まで一通り物を申さないと気が済まないのは劇場を後にした誰もが経験のある事だと思うが、それは我々にとっても例外ではなかった。

 

この後予定された小さな宴会への期待で、足取りも軽やかに愛車へと滑り込む。

 

「OK, it's usually like this, isn't it? Thrust into an all-new adventure, a down-on-his-luck Capt. Jack Sparrow feels the winds of ill-fortune blowing even more strongly when deadly ghost sailors led by his old nemesis, the evil Capt. Salazar, escape from the Devil's Triangle. Jack's only hope of survival lies in seeking out the legendary Trident of Poseidon, but to find it, he must forge an uneasy alliance with a brilliant and beautiful astronomer and a headstrong young man in the British navy.

 

「あれがああなってこうなった挙句にあれがバルボッサの娘だったなn

 

「......やめれ。ブログでネタバレとか

 

日曜日の帰り道はとてもスムーズで、こうして車中の臨時総括会議が熱を帯び一段落するころには、比例して車のスピードも徐々に落ち、初夏の爽やかなロサンゼルスの空に焼けるような夕日がそっと差し始めていた。

 

1年を通して乾燥しているせいか、空気の澄んだロスのマジックアワーは本当に綺麗だ。

 

ハモサやレドンド、マンハッタンビーチから吹くシーブリーズが肌に心地よい、お気に入りの場所へと車を停めると、行きつけの店をいくつか候補に挙げながらどの店で会議の続きを肴にするか話し合った。

 

「車置いて、いつものあそこに行こう」

 

「そうですね、じゃあ部屋に戻ってお金余分に準備してきます」

 

前日が和食だったためチジミが美味しいあの店にしようと会場がすんなり決まり、ビールとソジュ*1を黄金比で混ぜた恍惚の爆弾酒*2を浴びるベく各々部屋に戻って準備をするため玄関のドアを開けることにした。

 

リビングを通って左側に位置する私の部屋は、出て行った時と同じくきちんと鍵がかかっており特に何かを気にすることもなく手慣れた仕草で鍵を取り出すと、いつもと同じように届いた手紙に目を落としながらドアノブに手を伸ばした。

 

......ん?

 

ドアを開けてクレジットカードの勧誘やら、保険会社からの請求書やらをデスクに置いて一息つくと、普段見慣れた光景から少しピント、いやデッサンが狂ったような違和感が感じられる。

 

ーーー薄暗くなった部屋に電気をつけた途端、違和感の正体がいやでもピントを合わせて目に飛び込んできた。

 

窓が開いており、真下に位置するベッドの真ん中が枯れ葉と泥で汚れている。

 

そしてそこにあったはずの、寝転んで映画を鑑賞するのに最適なRetinaディスプレイ搭載のipadが、ベッドの上から綺麗さっぱりなくっているのだ。

 

 

 瞬間脳裏によぎった、いや実際口をついて出た言葉は思いの外短かった。

 

・・・マジかよ。

 

これまで泥棒というものが世の中に存在していることは理解していたが、まさか自分の周囲で、否、自分自身に降りかかることになろうとは露ほどにも考えたことがなかった。

 

目の前の現状に実感が湧かず、どこか他人事のようでもあり、それこそ別のテーマで作られた映画の続きを後頭部のあたりから見ているような気がして、しばらくは呆然とその場に立ち尽くす他なかった。

 

気を取り直し、慌てて部屋の隅々まで他になくなったものがないか調べて見ると、信じられないことに前出のipad以外にも

 

 

に加えてGucciのBambooバングルや現金など合わせ、総額で$15,000- 相当がなくなっていたのだ。

 

自分に起こった状況が理解できはじめると、次第に腹の底から堪え難い感情がこみ上げてきたが、これに油を注いで怒りを決定づけたのは机の上にあった洗濯乾燥機を回すために必要な25セントのコインたちまで持って行かれていたことだった。

 

ふつふつ怒怒怒怒)・・・・・・昔昔その昔親父から託されたロレックスとか思い出が詰まったジュエリーとか現金とかジョギングすんのに唯一のモチベーションだった音楽聴くためのちょっと無理して買った高えブルートゥースのヘッドホンとか諸々とか全部持って行きやがったくせにそれでも足んなくて洗濯機回すのにわざわざ車回してちっちゃなガムとか買いながら札から崩して苦労してためてたジャリ銭まで持って行きやがったのかゴラアああああん?てm

 

怒りに震える手でポケットからiphoneを取り出し、911*3へダイヤルを回すとすぐに交換手へ繋がった。

 

「911, where is your emergency? 」

 

「106........ave.................... CA 」

 

「Ok, what’s going on there?」

 

「My house was broken into by someone! 」

 

「We'll get there soon. Please wait.」

 

 

逼迫した状況が頭の回転を早めるのか電話をした時には妙に落ち着いており、とてもスムーズかつ端的に要件が通じたが、週末のぼちぼちに上がっていたテンションは、ナイアガラの滝壺に叩きつけられた何かのようにその高低差でめちゃめちゃになっていた。

 

 

次回へ続く

 

入会されていない方でも参加できる公開レッスン実施中!【シェーン英会話】

 

 

 

*1:韓国の焼酎:体調がいいと甘く、悪いと苦いという不思議なお酒

*2:韓国伝統のカクテル。別名サブマリン

*3:アメリカの110ばん

黒いくるま

 

 

くるまは良いんだ。
 
君に会いたくなったら、海にいけるから。
 
ロスの喧騒を抜けて、淑女のマンハッタンビーチまで。
 
悲しみを乗せて走るんだ。
 
 
僕の心と君のぬけがらを乗せて。

 

【成果コミット型英会話ALUGO】

不惑にして人生をしる (1:序章)

怒)......マジかよ

 

ロサンゼルス警察に電話をするために慌ててiphoneを取り出し開口一番、口をついて出た言葉は、予見のない事態に遭遇した場面で不意にでる、すなわち知性を無視しても驚きが表現できる、虚無感の基本の基の字を忠実に捕まえた中学生のそれだった。

 

上機嫌に帰宅して鍵を開けた途端、自分の身に何が起こったのか整理するのにしばし時間が必要だったが、事態の把握に伴って、細かい気泡のような怒りが下腹部からふつふつと湧き上がりつつあるのを後頭部のあたりで確かに感じていた。

 

警官が到着するまでの間に、説明のため一日を振り返る必要がある。

 

遡ること数時間前、その日はいつもと変わらぬ天気の良い昼下がりの日曜日だった。

 

前日の深酒の余韻を残し日曜の朝から退屈を持て余していたハウスメイトを連れ添って、海賊が七つの海をはるかに飛び越えてあの世とかこの世とか、はたまたは時空を飛び越えて大活躍する冒険活劇を見に行こうと誘ったのは遅めのブランチを済ませた後だったように思う。

 

「パイレーツ・オブ・カリビアン、今日からだったよね?」

 

このところシリーズを通して、大いなるマンネリの様相を深めてはいたが、世界で初めて封切りができる楽しみを従えて愛車のエンジンを優しくふかし目的のシアターへと向かう。

 

V6サウンドの子気味良い振動と、フルオープンにしたウィンドウから軽やかに滑り込むロサンゼルスの初夏の風を頬に感じながら、前作のおさらいと昨日の宴会の余韻を15分ほど共有した頃に我々は目的のシアターへと到着した。

 

そこは街のど真ん中にそびえ立つ、いかにもアメリカ然とした大型のショッピングセンターにあるシネマコンプレックスだ。いわゆる皆がアメリカ、と聞いて真っ先に想像が出来るであろう遊園地かと見間違うほどの巨大な複合型商業施設である。

 

映画館の位置する狙った階に駐車をスムーズに済ませると、予約した上映時間までの間にほぼ必ず立ち寄るヨーグルトのアイス屋へ滑り込み、アーモンドやフルーツなど各々お気に入りのトッピングをしこたまアイスに乗せて席についた。

 

「..さん、知ってます? また昨日大家がこっちにきて大騒ぎして帰ったんすよ」

 

「またか、今回はなんだって?」

 

「シャワーの蛇口を誰かが強く締めすぎて、水がちょろちょろ流れてるんだ! 何回同じこと言わせるんだってえらい剣幕で怒鳴り散らして帰ったんす」

 

「ははは、あのおっさん、そろそろ頭の血管きれんじゃねーかな」

 

前田というこの界隈の日系社会では有名なきちが。。もとい、個性的な大家は我々の住むハウスの隣に住み、住人とのりこという自分の嫁に難癖をつけては怒鳴り散らすのを日課としていた。

 

女性を除いて他人と住むことがなかった上に、少し神経質気味で家では静かにまったりと過ごしたい私がまさしく赤の他人と一つ屋根の下に住むシェアハウスに入るなどということは自分でも信じられないことであったが、

 

元々滞在していたサンフランシスコから引っ越して来る際、好みの部屋を探す前提でひと月だけと部屋も大家も見ずに決めてしまったがゆえに、引っ越し一日目にキャラが濃すぎるこの前田とのりこから、でむぱご丁寧な挨拶をいただいた時には目がクラクラしてどうやってキャンセルをしようかとばかり考えていた。

 

幸いにも前田は同じハウスには住んでおらず同居するハウスメイトと気が合ったこともあり、なんだかんだ言いながらもそこでの滞在はこの日で1年を迎えようとしていた。

 

 「でもあのおっさん、俺らにはすげえうるせーのに..さんだけには何も言わないすよね。何かあったらいつも2秒で論破してますもんね」

 

「まあ歳もそんなに離れてないし、そもそもが屁理屈ばかりで論拠がないからな」

 

「間違いないすね、はははは」

 

渡米後は時間を作って必ず映画館に足を運び、趣味と英語の勉強を兼ねて世界でもっとも早い最新作の封切りを楽しむことにしている。

 

サンフランシスコで初めて観た映画は「スターウォーズ・フォースの覚醒」だったが、その後いくつも視聴を重ね、人生のベスト映画ランキングに登場することとなった「LA・LA・LAND」を見る頃には英語のヒアリングも滞在年数相応に上がってきていた。

 

 

「そう言えばジャック・スパロウと片目のウィリーがどっかのシリーズで合間見えてスピンオフでグーニーズが復活するとかしないとかでマジ激アツなんだけど、ワーナー、2作らないんだったらディズニーに版権売って欲しいよな」

 

などとたわいもないことを話しているうちに上映時間がさし迫り、我々は少し歩いてシアターの中へと進むと、大盛りのポップコーンを片手にスクリーン中央少し後ろのベストポジションを確保した。

 

ポップコーンはまだしも、バケツサイズのソーダ*1の凶悪な極太さに毎度のことながら驚かされるが、不思議なことにエンドロールが流れる頃にはあのプールと見間違うばかりの砂糖水が綺麗さっぱりなくなっているのである。

 

はて、あの大量な液体は果たしてどこに消えていくのであろうか? 

ソーダを見るたびに、今世紀最大の謎が深まっていくのである。

 

それはさておき、本編が開始される前に上映されるトレーラーも映画館に足を運ぶ理由の一つだ。

 

来春とか、来夏公開の予告編を見ながら、プロットを想像してああでもないこうでもないと話しているうちに照明が落ち、今では知らない人はいないであろうくらいに有名となったテーマソングに乗せてお馴染みのメンバーがスクリーンをジャックしていく。*2

 

この映画特有のマンネリと呼ばれる所以で、正直オープニングの15分は寝落ちして覚えていないが、1時間も過ぎた頃から急に展開が代わり最後に到るまである程度落ち着いて見れていたように思う。

 

じゃじゃーんっ。

 

*1:アメリカでは炭酸飲料をこう呼ぶ

*2:シャレ...ワカリマスカ?

続きを読む